最近、家全体の空気がなんだか“どよん”としていた。
特別なことがあったわけじゃないのに、
空気が重い。
気づけば、家族もみんなちょっとずつ疲れてる感じで、
それぞれがちょっとピリピリしていた。
「これはもう……祓うしかない!」
わたしはそう思い立って、
引き出しにしまっていたお香を取り出して、
部屋という部屋に、お香を焚きながら巡って行った。
家族総出で、リビングもキッチンも寝室も、
順番に煙が行き渡るようにくるくる歩いて、
“香りの祓い”タイムをしたのだった。
でも、ふと気になった。
「……白龍ちゃん、お香の香りって、龍にとってどうなの?」
白龍ちゃんは、そのとき天井の近くでくるくる舞っていた。
「いいよ〜。ちゃんと“意図”がこもってる香りは、ぼくたちも好き」
「よかった……煙たかったりしない?」
「あはは、まあ、ちょっとむせる時もあるけど(笑)
でもね、香りって、“気を動かすツール”だからね。
香りに気持ちが乗ってたら、場のエネルギーはちゃんと動くよ〜」
「じゃあ、香りで“祓える”って本当?」
「うん、祓えるよ。でも“香り自体”が祓うんじゃなくて、
“その香りに込めた意図”と、“場を整えたい”っていう気持ちが重なると、
すごく効くんだよね」
「特に、“火”を通した香りは、空気の層に届きやすい。
だから、お香って実は、エネルギーを動かすには向いてるんだ」
「じゃあ、“好きな香り”でいいの?」
「うん、基本はそれでOK。
でも、“整えたい”ときは、少し“芯のある香り”がいいかも。
白檀とか沈香とか、植物の根や樹脂からきてる香りは、
“空間の芯”まで染みる感じがするんだよね」
「あと、天然の素材のほうが“氣”の通りがいいよ〜」
たしかに。
お香の煙って、ただ香りを届けてるだけじゃなくて、
目に見えない“なにか”を、空間ごと動かしてるような気がする。
それを白龍ちゃんは、
“風に乗る氣”みたいに言ってた。
「香りって、龍を呼ぶこともあるの?」
「うん、あるある〜。
その人の想いが“やさしく空にのぼる”とき、
それに気づいた龍が寄ってくること、よくあるよ。
香りって、“祈りのかたち”にもなるからね」
「ただし、なんでも呼ぶわけじゃなくて……
龍たちも“気持ちがこもってるかどうか”は、ちゃんと見てるよ」
なんだか、お香って奥が深い。
焚くだけじゃなくて、
“気持ち”ごと場に香らせるものなんだな。
白龍ちゃんは最後に、
「でも、やりすぎると“におい疲れ”するから、ほどほどにね〜(笑)」
と、くすっと笑って天井裏にすーっと溶けていった。
お香の香りと、龍の気配。
それは“香りで包む祈り”のような時間なのかもしれない。
次は、「香りと記憶がつながる時って、龍はどうしてるの?」
を白龍ちゃんにきいてみたいと思う。
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