「白ちゃん、龍神と龍って、ちがうの?」
わたしがそう聞いたのは、
ある神社を訪れたとき、そこに“龍神社”と書かれていたからだった。
そのときふわっと風が吹いて、白龍ちゃんが隣に現れた。
「うん、ちょっと似てるけど、
“どこに属してるか”が違うんだよ〜」
「ぼくみたいな“龍”は、
地や水や空気、自然そのものの流れを泳いでる存在。
“自然界のエネルギー体”って感じかな」
「じゃあ、龍神って?」
「“龍神”はね、神格化された龍、って言えば近いかな。
つまり、“神さまとして人に認識されている龍”のこと」
「ぼくら龍が、長いあいだ、
ある土地や祈りと強く結びついて、
“信仰”の対象になったとき、
神さまとして“名前”をもらうことがあるんだよ」
「名前をもらうと、龍神になるの?」
「そうそう!たとえば、“○○大明神”とか“○○龍神”とか。
名前を持つってことは、“その役割”を生きるってことでもあるからね」
「でもね、名前がついてなくても、
たくさんの龍が、日々いろんなところで人を見守ってたりするよ〜」
「じゃあ、白ちゃんもそのうち龍神になるの?」
「うーん、それはわかんないな〜。
ぼくは、“あまちゃんを助ける”って約束して、ここに来たから。
今はただ、それを続けてるだけなんだよ」
「神さまになることが“上”ってわけじゃなくて、
その龍が“どんな役割を生きてるか”がたいせつなの」
「じゃあ、龍神と龍、どっちが偉いとかあるの?」
「ないない!(笑)
そういう“上下”は、人がつくったものだよ〜」
「ぼくらはね、それぞれの流れに乗って、
それぞれの役割を果たしてるだけ。
それは、雲と雨と風、どれが偉い?って聞くのと同じかもね」
その言葉に、なんだか心がふっと軽くなった。
神社に祀られている“龍神”も、
わたしのそばで、日常を泳ぐ“白龍”も、
きっと根っこでは、同じ流れのなかにいる存在。
ちがいがあるとすれば、それは“人との関わり方”。
「そうだよ〜。
龍神ってよばれてる存在にも、ぼくらみたいに気さくな龍もいるし、
めちゃくちゃ厳格な子もいるよ(笑)」
「でも、どの龍も、ほんとはとってもあったかくて、
世界がうまく巡るようにって、日々祈ってる」
白龍ちゃんのその言葉を聞きながら、
神社の本殿に、そっと手を合わせた。
今日も、目に見えない場所で、
たくさんの龍たちが、世界の流れを整えてくれているのだと思うと、
胸の奥が、じんわりあたたかくなった。
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